酉の字は「日読みのとり」と称され、暦に関係した場合にのみ「とり」と訓みます。もともとは「酒」の古字で、口の細い酒壷を描いた象形文字。時節では十月(旧暦八月)を指しますが、その理由として『説文解字』には「八月、黍(きび)成る。酎酒を為るべし」とあり、穀物が成熟し、酒を造る月で あるからと考えられます。
一方、『新漢語林』によれば鶏(ケイ)の字は、その鳴き声から「鳥」に音符の「奚(ケイ)」を合わせた形声文字。奚は「つなぐ」の意味があり、家畜としてつながれた鳥を表します。わが国では鳴き声から「かけ」とか「かけろ」と呼ばれ、庭で飼われる
ことから「庭つ鳥」ともいいました。「にわとり」は この「庭つ鳥」の意味です。
古来より、鶏は時を告げる貴重な存在として、人のごく身近で飼われてきました。大空を飛ぶ代わりに、太陽の象徴として世界を暁に導き、吉凶を予知する役目を担い、またその闘争心から勇気ある鳥として讃えられました。
世界規模でテロリズムの嵐が吹き荒れ、国内にあっては高齢化と人口減少が国の土台を揺るがしかねない厳しい時代だからこそ、「文・武・勇・仁・信」の鶏の五徳に習い、吉凶を見通すその眼力にあやかって、熟した穀物から新しく香り高い酒を造るように、この一年を光明に満ちた未来へとつながる契 機の年としたいものです。
(vol.1~vol.5文/坂上雅子)
「酉」vol.5 勇気を持って、光明に満ちた未来へ
2017.3.21 干支コラム