コラム

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2012年12月の投稿Date

「巳」vol.5 巳年は終結と再生の分岐点

2012.12.25  干支コラム 

昔から中国では、美人と強い男子は巳年生まれが多いと言われます。男性では、マハトマ・ガンジー、毛沢東、ジョン・F・ケネディという世界史に残る政治指導者が巳年生まれです。
 生まれつき聡明で情熱的、仕事にも恋愛にも積極的に取り組むのが巳年生まれの人の特徴です。しかし、猜疑心が強く、執念深いところがあるため、人間関係で円満を欠くことが少なくありません。魅力的な反面、つき合いにくい自分の性格を自戒して、精進することが肝要です。
 遠く巳年の歴史を遡れば、中大兄皇子(後の天智天皇)らが蘇我氏を滅ぼし、新政権を樹立した大化の改新が645年。
 源義経が壇ノ浦で平家を破り、平氏一門が滅亡したのが1185年の巳年でした。1905年には世界を驚かせた日本海海戦の大勝利で日露戦争が終結し、1941年には真珠湾攻撃で太平洋戦争の火蓋が切って落とされました。1989年には昭和天皇が崩御され、時代が昭和から平成へ。そして、前の巳年の2001年に21世紀がはじまりました。
 中国の字典『正字通』には、「巳(み)は終わりの已(い)なり。陽気既に極まり、回復するの形なり」とあります。巳の時は、1日の半ばになろうとする時刻であるところから、物事の盛りの頃を意味します。
 良きにつけ悪しきにつけ、物事や時代が一つのピークを迎えて終わり告げ、新たなスタートを切るのが巳の年と言えるでしょう。それだけに、終わってみるまで何が起きるかわからない、気の抜けない年でもあります。
 古い殻を破って脱皮し、計り知れない生命力で再生を続ける蛇のごとく、しっかりした覚悟と果敢な勇気をもって、新しいステージへ踏み出す一年としたいものです。
(vol.1~vol.5文/坂上雅子)

「巳」vol.4 恋する蛇の恋愛説話

2012.12.19  干支コラム 

2匹が縄のように絡み合った交尾が数時間も続くといわれる蛇は、古来より旺盛な生殖力で知られます。そのせいかどうか、中国にも日本にも、蛇と人間の恋愛や婚姻にまつわる説話が数多く見られます。
 中国の民間伝説『白蛇伝』は、白蛇の化身の娘が人間の男性と恋に落ちるという恋愛故事です。やがて夫婦となり、幸せに暮らしていましたが、仏僧に蛇の正体を見抜かれ、退治されます。この説話を題材に、1958(昭和33)年に日本初の総天然色アニメ映画『白蛇伝』が制作されました。
 日本では、蛇が男性になって人間の娘と契りを交わす「蛇婿入り伝説」が多く伝えられますが、その反対に人間の女性が蛇になるのが、紀州に伝わる『道成寺伝説』です。
 僧の安珍に恋をした清姫は、叶わぬ恋の炎を燃やし、大蛇となって安珍のあとを追います。そしてついには、道成寺の釣り鐘の中に隠れた安珍を鐘ごと燃やし尽くします。美しい娘が凄まじいまでの恋心ゆえに蛇と化すこの伝説には、人々の心を捉えてやまない魅力があるようです。浄瑠璃や能、歌舞伎にも取り上げられ、今も広く語り継がれています。

「巳」vol.3 幸運と健康と富を運ぶ蛇

2012.12.13  干支コラム 

「鬼が棲むか、蛇が棲むか」とまで恐れられる蛇。しかし、ネズミなどの害獣を獲物とし、長い冬眠の間、何も食べずに生き続け、脱皮を繰り返して成長する蛇は、豊穣と永遠の生命力の象徴として世界各地で信仰される存在でもありました。
 わが国には家に棲みついた蛇を守護霊として敬う風習がありましたが、幸福を呼ぶ家つき蛇の民間信仰は、ドイツやスイスでも見られるといいます。
 西洋ではまた、蛇は医学の象徴です。ギリシャ神話に登場する名医・アスクレピオスが手に持つ杖には、再生と不死のシンボルの蛇が巻きついています。この「アスクレピオスの杖」と呼ばれるモチーフは、世界保健機関のマークとなっているほか、各国の救急車や医科大学のマークとして今も使われています。
 豊穣をもたらす蛇には、金運上昇の御利益もあるようです。インドの民間信仰では、財宝を守る白蛇が人の夢に現れてその所在を教えるといいます。わが国では弁財天の御使いとして尊ばれ、蛇が脱皮した後の抜け殻を財布に入れるとお金が貯まるなどの言い伝えがあります。

「巳」vol.2 「杯中の蛇影」は病のもと

2012.12.5  干支コラム 

 蛇は極地を除く世界各地に広く分布し、現生種は約2,400種といわれます。地上に棲むもの、地中に棲むもの、水中に棲むもの、樹上に棲むものなど多様で、致命的な毒を持つ危険種は約300種。日本ではマムシ、ハブ、ヤマカガシが毒蛇として知られています。
 足もないのに電光石火の逃げ足で、獲物に素早く毒牙を打ち込み、あるいは伸縮自在にからみついて巻き締め仕留める蛇は、古代の人々にとって脅威の的でした。
 中国・唐の『晋書』には、蛇の影に怯えて病気になる男の話が紹介されています。
 親戚の宴に招かれた男が酒を口にしようとすると、なんと杯の中に蛇が見えます。男は震え上がり、それ以来、病気になってしまいますが、後日、杯の蛇の正体は壁にかかった弓が映ったものだったと知ると、たちまち病が回復したというものです。
 この故事から、疑い出せば、何でもないことでもストレスの種になることを「杯中蛇影(はいちゅうだえい)」と言うようになりました。