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「午」vol.1 伯楽は名馬を見抜く

2013.12.24  干支コラム 

 野球のイチロー選手を見出した仰木監督のように、埋もれた才能を見抜く眼力のある人物のことを「名伯楽」と呼びます。
 この伯楽とは、古代中国の有名な名馬の鑑定人のことです。本名を孫陽、号を伯楽といいました。
 古書『戦国策』燕策には、こんな話が見られます。
 ある人が駿馬を市に出したがなかなか売れず、伯楽に頼んで一度顧みてもらうと、とたんに馬の値が十倍にはね上がったという。
 この故事の駿馬と伯楽の関係を、人間界に見たのが「伯楽一顧」です。世に埋もれていた優れた人材が、名君や賢相によって才能を認められ重用されることをいいます。名君・賢相のたとえとして使われるほどですから、伯楽の権威は広く認められていたのでしょう。
 中国で現代も使われている言葉に、「馬到成功」があります。軍馬が到着するなり戦を制するという意味から、速やかに勝利を収めることをあらわします。古代から近代に至るまで、馬は人々の生活や国の発展に欠かせない輸送と交通を担いながら、同時に人と生死を共にする特別な存在でもありました。
 干支の十二支獣のうち、馬ほど人間の歴史や国家の興亡に深く関わった動物はありません。名馬を見抜く力を持った伯楽が、名君・賢相に並び称され、その名を今に残しているのも、人にとっての馬の存在の大きさを物語っているのかもしれません。